「スター・ウォーズ」メイキング本 その2

アナキンのダークサイド堕ちについて、ルーカス監督が考えてたプランの変遷や、何故こんなに暗い映画を撮りたいかを知ることができて、「あぁ、こんなに悲しいお話じゃなくて、単純に善対悪の構図でハッピーエンドだったら良かったのになぁ。」って思いました。ただ、どうしても漆黒のダース・ベイダーは誕生しなくてはならなかったのですからね。

  • ルーカスがこの映画を撮りたかった理由に「人がどのようにして悪に走るかということが非情に興味深く思えるからだ。この特定のケースにおける前提事項は、誰も自分は悪いと思っておらず、彼らは違う見方をしているだけだ、ということ。例えば、ここに凄く出来のいい子がいたとする。でも、彼には欠点がある。これらの欠点が最終的に彼を自滅させる。これはそういう話なんだ。中心となる論点は、究極的には、欲望や所有欲を掴んで離そうとしないことだ。物質だけではなくて、人生や愛する人にしがみついて離れないこと、人生の道程や変遷の現実を受け入れないこと。生々流転のね。すべては変化していく。アナキンの感情は母や妻から離れなくなる。これが彼が転落する理由だ。物事を受け入れて流すことができないのだ。」うーん。わたしがアナキンに同情できるのは、まさにこうゆう人間的に弱いところだったりするんです。他のジェダイは、アナキンのように親元で幼児期を過ごすことなくジェダイに託されるんですが、彼は母の愛、それもたっぷりの愛を受けた奴隷として幼少年期を過ごしている。諦めきれなくて、寂しくて、愛を求めるのは当然だと思えるからです。寒くて寂しい心の中を暖めてくれるパドメの愛を離したくなかったし、母の二の舞はさせられないと決意する気持ちは、痛いほど伝わってきました。
  • この映画の中でとても大切な役割を果たしているライトセーバーの闘いにおける剣士レベルについて、スタントコーディネーターのニック・ジラートが語るには「オビ=ワンは8、アナキン、メイス、ヨーダダース・シディアスは9。レベル8に達するのは、パンドラの箱を持つのと同じだ。それを持てばどこにでも行ける。どこにも行かないのはダーク・サイドへの道だ。だが、誘惑が待っている。それを使えば、簡単に他者を追い抜くことができるんだ。だから、レベル8であるにはそれ相応の年齢でなければならない。アナキンのように若すぎてはだめなんだよ。あの若さにはダーク・サイドは魅力的すぎるんだ。」若くしてパンドラの箱を開けてしまったアナキン。体の内と外のアンバランスがもたらしたダーク・サイドへの道とシスの甘言。アナキンがダーク・サイドに堕ちていったときには「混乱した若者だったんだ」というヘイデン・クリステンセンのインタビューに頷けます。じゃあ、その後の展望は予測できなかったのか?と言われればそれまでですが…。ダーク・サイドに堕ちるまでのアナキンは尊敬されるべきジェダイであろうと、任務に忠実に、クローン戦争を闘ってきたはず*1です。尊敬すべき師であるオビ=ワンが肝心なときに居なかったというのも、常にこの映画のウイークポイントなんですね。そのオビ=ワンへの思いも複雑だったんですが、貴方だけが頼りだったのに、オビ=ワン・ケノービです。

*1:これは映画本編では語られていませんが、エピソード2と3を繋ぐアニメや小説では、アナキンはオビ=ワンと並んで銀河の英雄なんです